百里のつぶやき

看護師として、セラピストとして日々の気づき

患者さんから学んだ事 Part4

『怖い…!私はどこに行くの?どうなるの…⁈』

 

実感として教えてくれた人がいる。

 

私は純粋に生まれ変わりを信じていた。もちろん今でも信じている。

だから死んだら新しい人生を歩める。

死ぬ事は怖くない。だって新しい人生が始まるから。

 

死は祝福だ!なんてお気楽に考えていた。

 

だからホスピス緩和ケア病棟で多くの人生最期を迎える人の気持ちが分かっていなかった。

 

当時53歳の私と同じ歳でとても美しい、可愛らしい女性の患者さんが入院してきた。ニッコリ笑うと胸がキュンとする程の可愛いらしい方だった。

ご主人には最期まで諦めずに治療をして欲しいと言われたが、「もう闘う事に疲れたの。だから頑張れって言う主人に腹が立って…。最期は穏やかに笑って過ごしたいからココに来たの。」と緩和ケア病棟を自分で選択される。

 

黄疸で黄色くなり、腸閉塞で鼻からチューブを入れて胃液を出す処置をしていた。来てからかき氷を作って出した時は「美味しい…。こんな物を食べれるなんて…嬉しいわ〜。ここに来て良かった…ありがとう。」可愛らしい笑顔で喜んでくださる。

 

入院直後は穏やかに過ごせていたが、数日後から痛みが強くなりモルヒネの量が増えた事もあり、ウトウトして過ごす事が多くなった。

しかし、目が醒めると「怖い〜。側に居て〜。」と恐怖感を強く訴え始めた。

本来は気丈な方だったようで、弱音を吐く事は見た事が無いとご家族も戸惑っておられた。

今思うと肝機能は低下しており、全身状態は最悪でせん妄症状を起こしていたのだと思う。

恐怖感を訴える事が強くなり、叫んだりし始めた。

薬でウトウト眠って頂く鎮静が開始になった。

 

担当看護師として、彼女の恐怖心を少しでも和らげる事が出来なかったんだろうか?と悩む。

 

状態は徐々に悪化し、夜勤の帰り道『〇〇さんはもう最期かな?多分怖いって思ってるかな?出来たら変わってあげるのにな…』なんて考えてながら歩いていると「ほんと〜?」って言葉が頭の中から聞こえる。

急に『私死ぬんだ!えっ⁈死んだらどこに行くんだろう?』って白昼夢のように実感として恐怖感で押しつぶされそうになった。

 

始めて感じる恐怖感。しばらく死の恐怖を感じながら歩き、家に着いたときには心臓がドキドキしていた。

 

とても不思議な体験だったけど、きっと〇〇さんが私に教えてくれた事なんだろうと今でも確信している。