百里のつぶやき

看護師として、セラピストとして日々の気づき

患者さんから学んだ事 Part6

「お前に俺の気持ちなんか分かるもんか!」

 

私が看護学生の時に受け持ちの患者さんから言われた言葉。

 

悪性黒色腫の患者さんで、翌日片足の切断の手術を控えていた。

 

手術の前日は、剃毛(今はあまりしないが手術周囲の毛剃り)とか、必要物品の準備とかする事が沢山ある。

看護師さんに付いてまわり、何が何やら分からないまま、する事だけに夢中になっていた。

患者さんの気持ちなんか考えようも無く…

 

遠い昔で細かな記憶は無いが、患者さんから浴びせられた言葉だけが今でも忘れられない。

 

多分、教科書通りに患者さんの気持ちを聞かなきゃなんて、人の気持ちを逆撫でするような事を聞いたのか?

または能天気に「義足を付ければ歩けるようになりますから頑張りましょう。」とか言ってしまたんだろうか?

 

ただ言われたことがショックで泣くしか無かった。

 

40代の男性で妻子もある。

働き盛りで、足を切断することは生活に直結する。今後、一家の大黒柱としてどうやって妻子を養うか⁈仕事はできるのか⁈

自分の身体の一部がなくなる恐怖。

手術の恐怖。

初期の頃に大きな病院で診てもらったが、心配いらないと言われて放置して進行してしまった。

なんであの時ちゃんと診てくれなかった!あの時に処置してくれていたらこんな事にはならなかった!

悔しい!

 

他にも色んな思いや感情が渦巻いていたんだろうな…

何にも分かって上げられなかった。

 

看護は想像力が必要だと言われている。

人の気持ち、思いを想像する事。

そこから患者さんに何が必要かを察知する。

 

若いから、経験が無いからダメなわけでは無い。

 

以前働いていた病院で実習に来た学生さん、たった1週間で患者さんからとてつもなく感謝された。

とても遺言を書けるような状態ではなかったのに、亡くなった後からご家族が見つけて届けて下さった。

そこには学生さんへの感謝の気持ちが綴られてあった。

 

その学生さんがした事は、一緒に散歩に行きテラスに植えた植物を見ながら患者さんが元気な頃にしていた農業の話を熱心に聴いた。

せん妄状態で手が付けられない時もあったのに、学生さんが来てから穏やかになって、担当になって1週間で亡くなってしまったが…

 

実習中、学生さんが

「〇〇さんが泣いてるんです。僕どうしたら良いか、訳わからないんです。」

と助けを求められた。

部屋に一緒に行くと、彼が声をかけるとやはり泣き出す。手を握り無言で泣いていた。

そのままその場に一緒に居ることと伝えて私は退室した。

 

身体は衰弱して多くを語る事が出来なくなった。

でも、学生さんに出会えて良かった事、話を聴いてくれて嬉しかった事を全身で伝えておられた。

 

純粋に相手の事を思い、耳を傾ける、それだけで良かったんだなと今更ながら気付かされた。